夏目漱石の短編集『夢十夜』は、10の不思議な夢のお話。温泉旅館『夢十夜』もまた、湯宿を舞台にした夢心地な一夜を描きます。
1冊の本から、この宿は生まれました。
10の不思議な夢を綴った夏目漱石の短編集『夢十夜』。100年より前に描かれたその夢はまるで夜の闇にきらめく星のようでした。
湯河原温泉『夢十夜』は夢をコンセプトに、建築からお料理までご用意した温泉宿です。セレクトされた逸品が並ぶ不思議な商店。鏡のレストランでは甘い夢を見るデザート、懐かしい空間と夢に浸る温泉。そして館内には本が溢れています。
どこまでが現実でどこまでが夢なのか。物語の続きは是非その手でめくってください。
日本を代表する文人たちがこぞって湯河原に荷を下ろし、執筆や療養の時間をここで過ごしました。夏目漱石、芥川龍之介、与謝野晶子、谷崎潤一郎…、湯河原の風景を文字にした文豪たち。
街を歩くと湯煙が揺れ、この心地だけは昔も今も変わらない気がします。細い通りに並ぶ温泉宿と民家。手入れされた庭先は、客人を永く迎え入れてきた街の日常かもしれません。
派手さはないけれど、森と海の風が吹く。シンプルな贅沢がここにはあります。
湯河原温泉の発祥の地と呼ばれる「湯元通り」に『夢十夜』があります。300mほどの小さな通りは車一台が通れる幅。石畳の風情の中、散策の足取りも気がつけばゆっくりに。入り組んだ路地には、明治や大正に建築された旅館が並び、小川にかかる木造の橋を渡れば、文人たちの足取りを感じることができます。
少し足を伸ばすと「万葉公園」や「不動滝」といったマイナスイオンたっぷりの散策スポットがあり、季節によって時間帯によって変化する自然美は、数日の滞在も飽きさせない魅力があります。
『夢十夜』のライブラリィを“白昼夢”と名付けました。白昼夢とは、目を覚ましたまま幻想にふけること。
ここには、文学、マンガ、雑誌、写真集など、約300冊の本が並び、ソファではなくベッドが用意されています。
本の世界を旅しながらカラダを横にする。気がつけば、ふわふわと現実から遠ざかっている。体験してほしいのはそんな夢の中の散歩です。